凡庸人のあるある

凡庸なる我が身…落涙しそうになったエッセイを週刊誌で読んだ。

 

およそパーティーなるものの必然性も知らず、勿論そういう宴に出たこともない。

そんな人がとんでもないセレブ達が集まるパーティーに招待を受けた。

あの手この手の断る為のエクスキューズも通じず、出席の羽目となった。

 

まごまごしながらボーイから水割り一つ上手く供しても貰えない。

大勢の中の一人ぽっち。

さてそろそろ逃げ出そう!…とした時に「それでは○○様よりスピーチを頂きたいと思います」

…流暢な女の司会が自分の名前を呼んだ。

 

「や、ヤバイ!」と舌打ちすれば何故かそれは周囲に届き、「ヤバくありませんよー」と女司会者にギャグられてしまうオマケ付き…。

そこから彼の記憶は曖昧となり、気が付けば…パーティー会場を抜け出し六本木だったか渋谷だったかをフラフラと歩き、映画館に入っていた。

 

そこで観たのが今話題の韓国映画『パラサイト』だった。

映画の中で、セレブ達が唐突だがごく自然にパーティーを始めるシーン…。

自分と同じ様にモタモタしてる貧しい男が金持ちのセレブ女に聞く。

「なぁ…俺はここに合っているか?」

 

そこで彼は不覚にも落涙に至ってしまったという。

薄暗い映画館の中で泣いてたのは間違いなく自分一人だけだと思う…と。

 

そのエッセイを読んでいて僕もまた落涙していた。

痛いほどワカル!から。

 

何の邪念もなく、にこやかに善意のまんまでいる人達に混ざり、真っ直ぐにその場面を楽しめる人達もいる。

洒落たスピーチやジョークの一つも飛ばし、晴れやかな表情しかない様な人達の集まり。

そこへ長い不調に悪戦苦闘し、人を見たら泥棒と思う?…そんな苛め抜かれた野良犬見たいな感性の自分がポツネンと所在なく立っている。

 

自分は何と不釣り合いな、場違いな人間なんだろう!

…そんなどうしようもない引け目みたいな感覚である。

 

いつの間にか僕は善人が苦手になってしまった。

攻め来る悪意に対抗し、悪感情の泥にまみれて日々を過ごし来て、何とか平静を保っている身としては…善人達の笑顔が眩し過ぎるのである。

 

決して自分を卑下をしてるんじゃなく、プライドも何とか守ってるけれど。

そういうんじゃなく、平穏とか平和そのものの空気に身を置くと落ち着かない人間になってしまったのだ。

 

「俺はこの場を汚してしまうぞ!場違いに過ぎる!」

根拠なくそんな恐れを抱いてしまう人間なのだ。

むしろ怯えてると言った方が正確かもしれないけど…。

 

無防備にさらけ出された素直さを直視出来ないのは…相手に対してだけじゃなく、自分に対しても汚れた感情ばかりを使って生きてきたからなのかも知れない。

 

そんな爛(ただ)れた状況などと無縁で来た故の無垢、使い込まれてない無邪気な感情を自分が不用意に扱えば壊してしまう…そんな狼狽である。

 

知らないですむなら知りたくなかった汚れだから、ついつい心は歪んで行くのだ。

無理からスピーチなどと面前に引き出されたら…頼む…俺にちょっかいは出さないで欲しい!そっと放置して見逃して欲しい…のである。

 

純粋無垢に演れて来た人達に自分の紆余曲折なんぞ解る訳もなく…二つの世界を行き来出来る共通言語なんぞある訳がないのだ。

そんな場面に出くわすと必ずそぉーっと逃げ帰る自分だから…他人の話とは思えなかったのである。