なし崩し

『なし崩し』というか、むしろ『なし崩れ』といった風に世の中のプライスが軒並み壊れていった平成。

 

価格破壊という奴だ。

疑う事なくそれに乗ってしまう店主、ユーザー。

合言葉はコ・ス・パ。

 

メシを食うのにいちいちネチネチと値段の事を言う人間を身近に見たのは、今のレストランを開いてからだった。

どいつもコイツも業界評論家の様な口をききながら、妙に上から目線でのモノ言い。

もちろん、それも全員じゃなかったということも申し添えておかねばならないが。

少数だけど『人の努力』というものに対して想像力が働く暖かい人達も居た。

 

大抵、自称グルメの業界評論家達は…地方区では、という但し書きにおいて知名度のある会社に勤めてる連中が多かった。

レベルの悪い『女子社員の揉め事』を凄く深刻ぶって話す様な連中だ。

 

そんな井の中の蛙共和国とか鳥なき里のコウモリ合衆国の人間達は、呑みながら食べながら明らかに払うカネの計算をしているのが見て取れた。

ヨコシマな欲望で女を口説くとき…でさえ。

 

対策として、どんどんメニューのプライスを上げて行った。

これはとても効果的だった。

何回かの値上げでかなり体裁の良いメニュー構成になった頃、彼らに代わってやって来始めた『新規国交樹立したお客達』は、おしなべて「安い!」と言ってくれたのだ。

 

無考えに世の中の一部の人達が声高に叫ぶ話を真に受けちゃ駄目だと実感した。

どんな時も『自分の感性基準』でブレずに押し通す事が肝要なのだと改めて思う。

 

周辺の、『何分○○円の一本勝負!』的な営業をしていた店が消えて行く。

偉ブレって言うんじゃなく、「安売りはしたくない!」と思えるだけの自助努力が必要なんだと思う。

 

「俺は客だよ!」「カネ払ってんのよ!」的なカネ万能主義の無節操な客に媚びなきゃならない程度の仕事しかしていないから…結果的に、そんな客とバランスしてるお店が消えて行くのだ。

 

明日は我が身とならぬ様にソコんとこは絶対に譲れないという一線を引いとかなきゃ。

お客が悪いんじゃない。

そんなのに譲歩するしかない手抜きの横着をしていた店の自業自得って事なのだ。

 

『カネだけじゃ見えない魅力』を築く事しかない。

無条件にカネで媚びるしかない作品のまま無策を続けるのは、自分への冒涜なのだ。

 

仕事で『お前らみたいに楽はしてないぜ!』と少なくとも自分と喧嘩してる内は価格破壊による自己破壊にはならないから。

 

カネじゃなく愛着というものでお客と接点が持てる人間で在りたいと思う。

それには少なくとも自分を、自分の作品を愛せる人間で居なきゃね。

カネを愛する人間達によってカネで滅ぼされてしまう事になるから。