ショーケン逝く。
こうやって古い時間が日々少しずつ薄れ行き、新たな時代の色が濃くなっていくんだろうなぁ…。
昭和から平成の最後まで、風貌は変化しながら彼は頑としてショーケンで在り続けた。
傷だらけの天使、前略おふくろ様、こののテレビドラマ二作品が脳裏に甦ってくる。
「アニキぃ~」と彼に懐くリーゼントの水谷豊とのコンビは、これからサラリーマン社会に埋もれて行くんだろうなという自分達の未来像と対比をなしてカッケ~なぁと憧れたものだった。
前略オフクロ様でのサブはうって変わって地方出身者のボクトツな若者の役柄だった。
『俺は…とても悲しかった訳で…』という言い回しがとても新鮮だった。
二作品ともその時代の(高度経済成長が陰りを見せ始め)それ迄の抜ける様な明るいストーリーではない、人間の情けない面とか挫折感とかそれ故の反骨精神などが散りばめられていた。
その後の時代はみんな『何かオカシイぞ?』と思いつつ、感じつつ、バブルの怒涛の流れに巻き込まれ翻弄されて行った。
最近ではNHKで、死の病を抱えた老いたラガーマン役で深く渋く優しい情感溢れる演技を見せ付けていた。
様々の波瀾万丈を乗り越えた故の円熟味なんだろう、とテレビ画面を見入った。
『才能』なんだろうが、若い時代からの紆余曲折がその才能を磨いたんだろうなぁ。
トラブルまで栄養にして吸収してしまう野太くて恐ろしく繊細なレベルの才能だったのだと思う。
先日逝った内田祐也と親交があったというのも何となく頷ける。
絶えず時代に対して反逆、反骨の精神で以て苛ついていたのだろう。
あのラガーマンの台詞からは単なる柔和なだけじゃない、厳しさを潜り抜けた上での『力ある優しさ』が伝わり来たのだった。
不器用さだけが目立った傷だらけの天使は昨日やっと安息に辿り着いた。
ご冥福を祈ります…。